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文六つうしん

2009年08月のアーカイブ

2009年8月19日

地域住民のいのちと健康をしっかりと守り、より良い医療環境を獲得する医療

地域医療

地域医療研究会全国大会2009in長野~代表世話人挨拶~
          社会医療法人財団 天心堂
              理事長 松 本 文 六

 この度、地域医療研究会全国大会を、地域医療の奉斗故若月俊一先生が日本の地域医療の橋頭堡として築かれました佐久総合病院の主管で、長野市で開催することとなりました。
 地域医療研究会は、1980年に始まりました。全国各地で真摯に地域医療を実践追求しています有志の病医院及び医療従事者が集まり、情報交換と意見交換および交流の場として設けられました。1987年の諏訪中央病院を主管とする地域医療研究会において、改めて今後の研究会の在り方を論議する中で、2年に1回開催することとなりました。1989年ゆきぐに大和病院(新潟県)1991年京都南病院・堀川病院共催(京都市)、1993年天心堂へつぎ病院(大分市)、1995年川崎幸病院(川崎市)、1997年千葉徳洲会病院(船橋市)、1999年諏訪中央病院(長野県茅野市)、2001年弟子屈クリニック(北海道弟子屈町)、2005年白浜はまゆう病院(和歌山県南紀白浜)、2007年あおぞら診療所(千葉県)が主管として開催されてきました。途中の空白期間は、現下の様々な医療及び介護保険領域の問題をシンポジウムなどで広く論議を重ねてまいりました。
 今大会のメインテーマを『地域の再生・地域医療の再生』としました。このフレーズに地域医療研究会の今後の方向性のすべてが集約されています。
 医療崩壊という言葉が、医療関係者以外の口の端にのぼる程に、現在の日本の医療の危機が社会的に大問題となっています。それは、国民皆保険制度解体を政治目的とした小泉政権の始まった2001年4月にさかのぼれます。医療・福祉・介護・教育・保育の領域に、思想的には新自由主義を、そして、方策としては商売・金儲けの手法である市場経済原理を強引に導入しました。小泉政権は、『骨太方針2005』で、2006年度より、5年間に社会保障費の総枠を1兆1千億円圧縮することとし、2005年12月には『医療制度構造改革大綱』を策定し、それによって、2006年4月の診療報酬を、2005年10月と2006年4月には介護報酬を大幅に切り下げました。
この方策は、医療機関への締め付けばかりか患者さんに大幅な負担を強いるものでした。医療機関の財政的締め付けは必然的に地域医療を担っている200床以下の中小病院が対象となりました。大病院を締め付ければ、各地の行政の首長は、強く抵抗するのでやれない、そして診療所に対しては、日本医師会という強力な与党支持団体があるのでやりにくい。このような構造の中で中小病院の締め付けは、診療報酬点数という形で、国民一般には非常に理解できにくい形で行われています。因みに、2008年4月の診療報酬改定の中の入院時医学管理料と入院基本料です。前者は、いくつかの施設基準があり、その一つは年間の全身麻酔患者数が800件以上が必須です。あまりにも要件が厳しく、8000有余の日本の病院の中で、この超“加算”を取得しているのは、この6月1日現在で170余病院でしかありません。後者は看護師数が多いほど点数を高くしています。官公立やブランド大病院は、相対的に看護師の給与が高いため、これらの大病院は看護師争奪戦を大展開し中小病院から多くの看護師を一気に引き抜きました。それでなくとも中小病院は疲弊していましたが、これによって病床規模を結果的には縮小せざるを得ないような経営的には極めて厳しい環境に追いやられました。同じ治療をしても、同一疾患同一状態にある患者さんに関する医療費が病床規模によって大きく格差をつけられています。これは、まさに中小病院潰し以外の何物でもありません。それとともにこのような方策は必然的に医療関係者の間に処遇の格差とそれに伴う意識上の反目を持ち込むことになります。現場はそれによって更に疲弊し、そのつけは最終的には患者さんに及びます。
又、中小病院潰しの一方で、『骨太方針2005』は、医療保険制度そのものの崩壊を開始させています。2008年6月1日現在の、国民健康保険の滞納世帯は全世帯数2172万世帯のうち453世帯(20.9%)に及んでいます。そのうち、資格証明書世帯が34万世帯(1.6%)、短期被保険者証世帯は何と124万世帯(5.7%)に達しています。現在のような、非正規社員の解雇→無所得世帯・個人の増加に伴い、ゆうに1000万人が無保険に追いやられてしまいそうです。
2008年4月に発足した後期高齢者医療制度の中では、何と570万人に及ぶ高齢者が無保険者になる枠組みが作られていました。全国の高齢者の怒りと憤りの中で、国はついに、この制度の下では無保険者は作らないと宣言せざるを得なくなりました(’09.4.22.)。これ以前の老人保健制度では、75才以上の高齢者は保険証返還・資格証交付の対象外にされていました。
このような形で、急激に進行してきている日本の医療保障制度及び地域医療の崩壊に対して、私たちはどうすればいいのでしょうか?
 私は、これまで、地域医療とは、《 地域を基盤として、継続的に展開される全人的かつ包括的な広義な医療 》と定義して来ました。しかし、現下のこのような状況の中では、地域住民のいのちと健康は守れません。地域医療の定義を以下のように改めるべきだと考えました。
 地域医療とは、《 地域住民とともにその地域を基盤として全人的かつ包括的な広義な医療を継続的に提供できるよう社会と政治に対し、積極的に働きかけ、地域住民のいのちと健康をしっかりと守り、より良い医療環境を獲得する医療 》と。
 これからの地域医療研究会は、このような形で、充実・発展させてゆくべきだと考えます。そのためには、私どもが、医療(広義な)に関わる政策を発信し提言ができるようにすべきです。
 本日の大会が、その方向に向けての礎になるべく、この2日間に亘って熱い論議と厚い討論ができることを期待します。

2009年8月 9日

“小泉改革の正体” ~それは皆保険制度の解体~

医療政策

2002年08月01日
    日本病院会雑誌Vol149,No8掲載/2002.8


 6月14日、10月からの本人負担3割を含む健康保険法の“改正”が強行採決された。
 小泉首相の社会保障に関する視座は、経済財政諮問会議、総合規制改革会議及び産業構造審議会新成長政策 部会の意見答申に立脚したもので、とりわけ前二者の影響が大きいと言われている。因みに、それは株式会社の医業参入問題とこの4月からの診療報酬改定の中に鮮明に示されている。

この両者に共通しているのは、
①大都市・大病院中心の医療提供体制へ移行する。
②貧しきものは医療を受けるべきでない。
という思想である。

 今回の診療報酬改定にはこの二つの思想が具体化されている。外科系領域では手術例数と医師の数により、基準症例数に達しない場合には30%減算される。人工関節置換術の場合、整形外科を標榜する5年以上の経験医師が3名以上勤務し、年間50例以上の手術実績がないと、手術手技料が30%減算されるという。大学からの医師派遣が確実に可能な大都市の大病院では100%算定は可能である。大都市では人口が多く、対象患者も相対的に多い。従って経験のある2人の医師がそれぞれに25例ずつすれば50例を超すことは容易である。しかし、地方の病院で熟練した整形外科医が独りで30例の人工関節置換術をしたとしても手術手技料は70%しか支給されないことになる。

 小児科の領域でも同じような施策が認められる。小児科医の数が1~2人、3~4人、5人以上で1日2100、2600、3000点と大幅な格差が設けられている。当へつぎ病院では、昨年の10月まで小児科三人体制であったが、《民間病院には医師を派遣しない》という新教授の一言で急拠一人体制となってしまった。三人体制と一人体制では忙しさも極端に違い、小児科医師は夜間もオンコールに応じざるを得ず、睡眠は著しく削られ疲労困憊の状態に陥っている。小児の急病・救急は、時間を選ばない領域であるために一人体制の病院では医師への負担はきわめて大きい。五人以上の体制であれば、お互い休息をそれなりに取れて、相互の意見交換が常にできる。従って安全対策面でも医師の安心感の度合いは一人体制に比し数倍勝る。このことは、常勤医一人体制の病院の小児科は閉鎖しなさいと通告していることに等しい。

 いずれにせよ、今回の診療報酬改定の基本的視座は、大都市・大病院(多くは公的病院)重視、地方及び中小病院軽視の思想である。アメリカの医療の質・レベルには学ぶべきことも多いが、陰の部分は決して学ぶべきではない。日本においてはむしろこの陰の部分をどうするかの視点で再構築されるべきなのに、厚生労働省の官僚は陰の部分の拡大に手を貸しているとしか私には思えない。 

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2009年8月 7日

医療・福祉・介護の領域について無頓着な政治家?

医療政策

 ~ 団体の定期大会で来賓として挨拶、その挨拶文から抜粋  09.6 ~ 
 
 さて、日本の医療を考える立場より、一言ご挨拶申し上げます。
 医療崩壊、医師不足という言葉がすでに定着しておりますが、その実態については国民には全く見えてきません。医療・福祉・介護領域の問題は、国民にとっては生活基盤と密接に関係するものですが、そのお世話にならない限りその必要性とその重要性を実感することはなかなか難しいようです。とりわけ、政治家は権力闘争に明け暮れ、高度の緊張感のせいか、あまり病気をしません。そのため、医療福祉介護の領域については無頓着です。そのように私どもには思えます。
 現在喫緊の課題とされている問題について、私の意見を述べさせて頂いて、ご挨拶とさせて頂きます。後期高齢者医療制度と資格証明書と無保険の問題、脳死臓器移植の問題に絞って話させて頂きます。

 まず、後期高齢者医療制度の隠された一番の問題は75歳以上の高齢者約1400万人のうち約500万人に及ぶ35%の高齢者が保険証をもてなくなる危険性が制度発足当初よりありました。全国の高齢者の怒りと憤りの声に押されて、最近になって厚労省はやっと「75歳以上の高齢者には資格証明書は発行しない」と言明しました。お年寄りの怒りと選挙の折りの高齢者の高い投票率を考えての言明でしょう。
 昨年6月1日現在の国民健康保険の滞納世帯は全2172世帯の内453万世帯、なんと20.9%に及んでいます。5世帯に1世帯が保険料を滞納しています。その1/3が保険証を持っていません。昨年の派遣切りなどを契機に、その数はもっと増えていると思われます。日本の医療制度はまさに崩壊の危機に瀕しています。オバマ政権はアメリカに皆保険制度を導入したいと言明していますが、アメリカ一辺倒の日本の政治はアメリカ流の新自由主義と市場経済原理を医療福祉介護に導入して日本の医療福祉介護を崩壊の危機に陥らせています。何という皮肉でしょう。
 日本が世界に大いに自慢してもいい医療保険制度をサッサと捨てるような政治に対して、私たちははっきりと袂を分かつべきです。

 

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