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文六つうしん

< 生き場所づくり (2) メイン 人は旅をして気をもらう (4) 鳴門 >

2008年5月 7日

人は旅をして気をもらう (4) 鳴門

§ 壮大なる偽物絵画を観る! ① 大塚国際美術館

 久し振りに2泊3日の旅をした。以前から何としても行ってみたいと思っていた、徳島県鳴門市の “ 大塚国際美術館 ” を観に行った。
 壮大な偽物絵画館である。古代壁画から世界25ヶ国190余の美術館の所蔵する現代絵画まで、至宝の西洋絵画1000余点が、オリジナル作品と同じ大きさの陶板として複製されたものが展示されている。これだけでは、そんな本物でないものを観ても仕方ないではないかと想う方も多いと思うが、《 百聞は一見にしかず 》 である。中にはすでに以前に本物と対面したものに比し、これは? と思うところもあるが、“ 壮大 ”  さに息をのむ想いで観ていると、複製であることさえ忘れてしまった。
 とにかく、順路の真先はバチカン宮殿の中のシスティーナ礼拝堂と全く同じ規模の空間に導かれる。30m もあろうかと思うドーム状の天井にはあの有名なミケランジェロの壁画がそのままの形で見えた。ここで複製という衣が脱ぎ捨てられてしまい、ミケランジェロのすごさ、天才性に息をのむと同時にウゥーンと唸 ( うな ) ってしまった。見事!という形で言葉として何と表現していいのか、この空間に完全に飲み込まれてしまったという感じである。
 ミケランジェロは、教皇ユリウス2世から天井全面にフレスコ画を描くことを命令されたが、自分は彫刻家であると、当初は固辞していたらしい。しかし、この天井画は、盛期ルネッサンス絵画の最高傑作の一つとなった。おおよそ、1000㎡ のスペースに300 近い人体がひしめく大壁画を、彼はほとんど助手を使わずに独力で完成させたという。足場をつくり、天井を見上げつつ、これだけのフレスコ画を描くには相当な体力と技量がない限り不可能であろう。それを、独力でやったというから、……。この天井画 『 天地創造 』 ほかは1508年から12年、4年間で描いたという。

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 また、天井画を描いて約四半世紀後の1936年から5年かけて礼拝堂の奥壁に 『 最後の審判 』 を描くことになった。これは、動乱の時代のローマに対してのキリスト教の視座からの世界の終末を見透かしたものだと言われています。ここには、《 静かに世界の終末を迎えるのではなく、神の裁きの前で動乱し、絶叫する人類 》 が描かれています。破局の時代、危機の時代の精がここに映し出されている。現在の日本にもピッタリ合う精神的光景でもあると、私、松本文六は想う。

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 空間を本物と全く同じくするものがいくつかあった。ポンペイの 『 秘儀の間 』 が再現され、ラファエロの生地ウルビーノにあるフェデリーコ・ダ・モンテフェルトロの書斎もまた原寸のまま展示されている。ジョットの壁画のあるストロヴェーニ礼拝堂もまた圧倒的な存在感を示していた。紺碧の星空に紛 ( まが ) う天井は現代人が忘れてしまった空を想い出させる。
 壮大な偽物というよりは壮大な複製という方が的確である。

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