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文六つうしん

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2008年5月19日

死に場所づくり (1)

エッセイ 1

§ 「水戸黄門」と老人たち ①

 私の仕事部屋は、へつぎ病院とは60m隔った老人保健施設陽光苑の3階にある。へつぎ病院の診療のために陽光苑の階段を日に何度となく昇り降りする。その階段の降り切った2階と1階のところに入所者の食堂がある。食堂とはいっても、部屋として独立している訳ではない。談話コーナーも兼ねているので大きなテレビも置かれている。
 私の陽光苑との接点は、毎日の階段の昇降の折に出くわす入所者との出会いや、隅々眼に入るいろいろな場面の光景と、1か月に1回行なう理事長としての回診のときに得られる。この “ 接点 ” の中で気づいたのは、入所者のテレビに見入っている姿に波があることだった。ポツンと一人しかテレビに見入っていないこともあれば、何人かがいろいろな姿勢でたむろして見ていることもある。どういう番組に関心があるのかな? と観察していると、「水戸黄門」と「相撲」に最も人気があるようである。
 子どもたちは、いずれにもそれほど関心を示さない。ファミコンによるゲームのほうがずっと楽しいからである。中学生も高校生も大学生も、大部分は、現に 「 相撲部 」 や 「 演劇部 」 に属している人以外で、「 相撲 」 や 「 水戸黄門 」 に見入ることはほとんどないと思う。老人たちの間で何故それらが人気があるのかと私の娘に問うと、「 相撲は国技だし、昔から親しんでいたんでしょ。水戸黄門はいつもその結末は葵の御紋で一件落着なのだから! 」 「 プロの相撲取りなんてまずなろうと思う人はほとんどいないし、水戸黄門だってなろうとしてなれるもんではないわ。この二つの番組のキーワードは、観る側に常に安心感があるということなのよね 」 という答えが返ってきた。

*初出 月刊 総合ケア Vol. 3 No. 9 1993.9

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