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2008年4月21日

医療についての質問から

総合診療
 総合診療についての質問がありました。以前、かかりつけの医院の壁に《 総合診療反対 》のビラが張られていた、という方からです。


§ 総合診療とは

 総合診療とは、患者さんの健康上の問題について一応何でも答えられる診療のことを言います。最近は総合診療医とか総合診療科・総合診療内科という標榜 ( ひょうぼう ) もされています。
 一般的には、内科系の常見病・多発病の診断と治療ができ、小外科的な処置もでき、二次救急外来 ( 入院を必要としない救急・急患を扱うのを一次救急といい、入院を必要とする患者を主として扱うのを二次救急といい、特段の処置・手術等を必要とする救命救急診療を三次救急という ) で重症度を判断でき、三次救急施設への患者の搬送を指示できるだけの能力を有している医師を総合診療医という。言い換えれば、臓器別医療 ( 心臓外科・呼吸器外科・アレルギー科など特定分野のみを専門とする医療科の医療 ) とは違い、全人的医療・包括的医療を追求・実現するのが総合診療科の役割です。アメリカではGeneral physician と呼ばれています。

 今回、質問を寄せていただいた方のかかりつけ医での 《 総合医療反対のビラ 》 は恐らく、今回の後期高齢者医療制度の中味についても賛成できないという意味だったと考えられます。この制度の中味については、私ども医師にも理解しがたい仕組みが内臓されていました。
 75才以上の高齢者は、かかりつけ医( ⇒ これを “ 主治医 ” と呼ぶと厚労省は言い始めた)にかかり、他の医療機関に行く時には、その先生の許可をもらいなさい、という形の “ 登録医制 ” を目指していました。
 “ 登録医 ” 制度とは、AさんはX診療所に登録しなさい、AさんがY診療所やZ病院にかかる場合には後期高齢者診療科…1ヶ月定額5,400円の報酬を診療所に広域連合から支払い、自己負担は600円…はYやZの医療機関には支払われないという制度。これは、フリーアクセスの制限を意味します。また、他方では、必然的に医療機関同士の患者のとりあいを行わせることを前提とされています。しかも、驚くことには、厚労省は主病を1つにしなさいと主張しています。例えばAさんがX医師を登録医と決めれば主病(例えば高血圧)についてはX診療所には、後期高齢者診療料を認めます。しかし、Y診療所やZ病院にかかった時にはそれは支払いません。それは、主病は1つしかないからだと厚労省は言います。
 高齢者は、慢性疾患をいくつも持っています。例えば、糖尿病や高血圧、そして狭心症も高コレステロール血症もという具合で、主病を1つに限定せよということ自体が不可能です。例えば、胃がんが見つかったとすれば、一般的には、私たち医師の間では、最優先に治療されるものとして胃がんを主病とします。手術が終わったあとは、糖尿病が悪化して、それが前面に出れば、糖尿病が主病ということにはなり、胃がん術後状態が副病名になります。しかし、平時においては、糖尿病・高血圧・狭心症・高コレステロール血症をトータルに主病とせざるを得ません。医療のことが全く判っていない厚労省の役人が、医療界の定見・常識を無視して 《 主病は1つ 》 とか、《 主治医制度 》 とかを持ち出して来るので、現場の医師たちにとっては憤怒に耐えられないのが実情です。
 しかも、《 総合診療ができる 》 主治医制度を設けると言い始めたので、またまたおかしくなってきたのです。厚労省が言う 《 総合診療のできる 》 ということは、《 高齢者の診療が総合的に診れる 》 という意味で使っているようです。開業の先生にしてみれば、俺たちはいつでも高齢者を総合的に診ているんだ。俺たちは高齢者をよく診れないと言っているのと同じではないか、俺たちをバカにしているのか!と大変な騒動になっています。
 大きな病院で20~30年外科手術ばかりやっていた医者が、田舎に行って、明日から高齢者の一般内科の診療をやってくれと言われたら、恐らく不可能です。耳鼻科・眼科の医者にそれを要求してもできるわけではありません。
 このような現場に混乱を引き起こしているのは厚労省自身です。しかし、上に述べたようなことは医師不足・医療崩壊の中で、厚労省としても医療政策をどうすればいいのかについて混迷して方針を提起できなことをも示しているとも言えます。それに、高級官僚のレベルも悪くなってきています。
 ともかく、後期高齢者医療制度は、ハイリスクグループをひと握りにしてそこでの赤字については、後期高齢者や障害者自身で賄え!という制度でもあり、このことは、世界に冠たる日本の皆保険制度とWHOから評価されていたものを一挙に崩してしまう悪法です。そもそも、国民皆保険制度とは、医療・福祉・年金について、ハイリスクグループとかローリスクグループとかにかかわらず、リスクを分散して、国民一人ひとりの生存権を守るという秀(ひい)でた理念から出発したものです。今回の後期高齢者医療制度は、この理念そのものを根本より壊すことを最大の目標にしていると私には思えます。
 だから、私は、この後期高齢者医療制度の廃止を求めているのです。
 
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