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2008年4月15日
何のため誰のために医療をするのか?
エッセイ 1
§ 生活を診る医療 ④
8年間千早に籍を置いた後、思うところがあって79年に郷里の大分に帰り、80年9月、101床の天心堂へつぎ病院を開設しました。
へつぎ病院開設にあたって 《 ①出かける医療 ②見ざる言わざる聞かざる医療はしない 》 という2つの医療実践指針を掲げて診療を開始しました。当初は小児科医として診療していましたが、医師不足のため、3年程して内科に転向しました。内科の同僚から学びつつ、外科医から小外科や救急処置を習い、90年頃には 《 専門は? 》 と聞かれれば、《 総合診療医です 》 と答えられるようになりました。現在では、介護老人保健施設の長をも兼ね、総合診療医としての技量が今一つ増えた気がします。総合診療医はプライマリケア医と言いかえられます。
71年に医師免許を得てから32年、今想うこと、《 無知程恐いものはない 》 という諺通りに、今や360有余人の職員を抱える医療福祉複合体―天心堂―を創りあげてしまいました。これは、私自身が長期的展望に立ってここまでの計画を立てて実行した訳ではなく、結果としてこのようになりました。
へつぎ病院を創設してのこの22年間で、現在の医療というものがやっと見えて来ました。最初に気づきましたことは、現在の日本の医療は臓器を診ても、患者さんの生活は診ていないという現実でした。大病院・大学病院の医師の大部分は、人の生活 ( = 生きるということ ) の中の一断面でしかない疾病状態を、臓器の中でしか観ていないという恐るべき実態でした。
それを思考と行動の中枢…脳…を対象とする神経内科や脳外科医は、否応なく患者さんの生活を診療の中に組み込まざるを得ませんが、外科や整形外科は、摘出・再生・修復の手順が終了しますと、後は関知しないのが一般的です。医学の細分化が進むにつれ、それは益々激しくなってゆきますが、医者が診る疾病は、やはり患者さんが生活している過程で隅々疾病に罹患した生活の一断面でしかないという点を医者はもっと知るべきです。QOL (注) という言葉は、その意味での警告と受け止めるべきだと私は思います。
注 : Quality of Life の略。生命の質・生活の質・人生の質と訳される。筆者自身はすべての意味を込めて使用しています。80年代後半から医学論文で、《 治療により、その患者さんの QOL を高めることができる 》 という使い方が頻繁にされ始めました。
*初出 九大医学部同窓会誌 『 学士鍋 』 第125号 2002年12月20日発行
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