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文六つうしん

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2008年4月30日

生き場所づくり (1)

エッセイ 1

§ 新しい医療・福祉の視座の確立を ③

 しかし現代医学の到達した地平のなかで、近代医学の成果と限界という極めて重要な2つの事項が、現代の医学教育では全く教えられていません。 「 病をみて人をみず 」、 「 木を見て森を見ず 」 という諺 ( ことわざ ) が残念ながら現在の医学教育の世界には罷 ( まか ) り通っているとしか思えません。
 “ 生き場所づくり ” とは、まさに、現代医学の到達した地平のなかで、その成果と限界を十二分に認識し、一人の患者さんを生活のなかでしっかりと支えるということだと思います。そして、その出発点は、疾病が疾病として表に顔を出さない段階で患者さんの悩みを聞き、応えなければならないプライマリケア (注) の場です。プライマリケアの現場では、大学で学んだことはほとんど役に立ちません。それは、近代西洋医学が、できあがった疾病概念から出発する方法を最優先にしているからです。したがって、疾病概念に相当するものを見つけることができなければ、その医師を手当てを放棄せざるを得ません。現実の社会のなかには、疾病概念として確立していない前疾病状態というものは際限なくあります。またプライマリケアの現場では、慢性疾患の急性期を乗り越えた患者さんの、後の状態を生活のなかでしっかり支えるということが肝要です。
 この “ 生き場所づくり ” と “ 死に場所づくり ” という概念には、「そこで人間が生活している」ということが含まれています。このような視座が確立されれば、若き医学徒と日本の医療界は改めて、21世紀の保健・医療・福祉を構築することが可能となるでしょう。
 医学・医療・福祉概念の大変容のなかで、医療者はこれからどうあるべきなのかを真剣に考え行動することを社会から要請されているのではないでしょうか。


注 プライマリケア : 患者が最初に接する医療の段階

*初出 月刊 総合ケア Vol. 3 No. 11 1993.11

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