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文六つうしん

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2008年3月19日

崩れゆく日本の医療 ― その原因と対策 ― ④

医療政策

§ Ⅳ 医療崩壊を促進した元凶

 図1(3月18日を参照)にみるように、医療費抑制のために、診療報酬制度に市場経済原理を導入したことは、医療崩壊をさらに促進させた。
 その最たるものが“平均在院日数の短縮化”に象徴される。わかりやすく言えば、1990年代半ば頃までは、老人の肺炎などは20日間位でゆっくり治していたが、これを10日間で退院させれば“報奨金”を出すというアメとムチの政策が診療報酬に反映されることとなった。そうすると医師・看護師をはじめとする医療従事者の労働密度は2倍となる。これが1~2年ならば何とか我慢できるが、1990年代後半から、診療報酬の2年毎の改定の度に平均在院日数短縮化報奨金制度という固いこん棒で尻をひっぱたかれ、医療従事者は疲労困憊(こんぱい)してしまい、ついには職場を離れて行った。また、病院経営が厳しい中で、2000年代に入って今度は救急医療に関しても“報奨金”制が導入されてきた。それまで、救急をやっていなかった一部の大赤字の公的病院まで“報奨金”を求め始めた。そのための要員を確保するために中小病院より医師・看護師などが引き抜かれ、中小病院が医師・看護師不足によってますます疲弊し、ついには病棟閉鎖や、診療科閉鎖が起こってきた。
 71看護とは、1人の看護師が平均7人の患者を看るという体制を病院単位で用意すれば、大幅な“報奨金”を出すという方針が2006年の診療報酬改定で明示された。これを契機に、看護師の大移動が全国的規模で起こり、中小病院は経営的に首をしめられる状態に陥(おちい)ってしまった。これは、表4を見れば歴然とする。おそらく131以下の病院はほとんど赤字決算をせざるを得ないであろう。
 このように、医療現場に医療費総枠を増やさず、市場経済原理を導入することにより、医療崩壊は極度に促進されてしまった。
 20044月に始まった卒後臨床研修制度の開始により多くの研修医が都市に集中し、医師の偏在を促進。併せて大学に残る研修医が少なくなると大学病院の診療機能に支障を来たしたため、派遣先より医師を引き上げるという事態が発生。中小病院はそのために診療を縮小・閉鎖を余儀なくされ、地域の医療に大きな支障を来たし、地域医療が崩れ始めた。さらには、厚生労働省といくつかの医学会が病院機能の重点化・集中化の大合唱を始め、中小病院の小児科や産婦人科には最低2人あるいはそれ以上いないところには大学は医師を派遣すべきではないとして、医療崩壊の穴をますます拡げる役割を担ってきた。
 他方、対患者という関係で医療崩壊が促進された大きな要因として、医療訴訟の問題がある。
 神の力を借りなければ、あるいはその現場の技量だけではどうすることもできない不可抗力の事故が訴訟に持ち込まれると、病院も医師も疲れ保身化してしまい、保身医療が跋扈(ばっこ)しはじめ、医療のソフトが自壊しはじめたのである。
 これらのことはⅠの部分で述べた(3月16日を参照)ので繰り返さない。
 以上を言葉としてまとめると、以下のようになる。

医療崩壊とは?

 病院勤務医が、様々な医療政策の朝令暮改的な改変やマスメディアの過度にして不正確な医療“事故”報道などにより、その勤務の過酷さに耐え切れず、マイペースで私生活と診療が選択できる開業へと走ったために、病院が医師不足により閉鎖されたり、診療科の縮小・閉科に伴って、患者が従来通りの至便な医療が受けられなくなっている状況の総体的表現である。 <2007.11.5 松本文六>

【表4】

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