![]()
HOME > 文六つうしん > 見る・観る・聴く・嗅ぐ (12)
| < 見る・観る・聴く・嗅ぐ (12) | メイン | 見る・観る・聴く・嗅ぐ (13) > |
2008年3月13日
見る・観る・聴く・嗅ぐ (12)
医療政策
§ 救急の “ タライまわし ” ③
何故こうなったのか?
(1) 一つは救急患者を受け入れる二次救急病院の当直医に専門外の患者さんが来られた場合
当直医がその診療に自信がないと断ることが多くなった。その背景には医療裁判の増加である。例えば、脳梗塞の患者の場合、現在は最新の治療 ( A - PA 療養) が要請されている。もし、当直医が整形外科医で A - PA 療法を経験したことがなく、自信もないとしたら、救急隊より 《 脳梗塞のようです 》 と連絡があった時点で、《 申し訳ないが、それは○○脳外科か、△△病院にお願いしてくれ 》 と答えることは容易に想像がつく。
それは最近の医療裁判では、《 脳梗塞の治療には A - PA 療養というのが主流になっている。にもかかわらずそれを施術しなかったのは、問題があるのではないか!》 と患者側の気持ちから追及される。このような中では、当直医自身が自分の自信のない領域を避けようとするのは極自然の反応である。
(2) 医師も人間です!
世の人々は医師は万能であるべきと決めてかかっていることに、私たち医師は困惑している。医師も人間です、酒を飲んで診てくれるな! と休みにもかかわらずオンコールのため呼び出される医師の立場も少しは考えて下さいと言いたくなるのも人情です。患者の皆さん、医師は聖人ではありません、万能ではありません。時に失敗することも事実あります。100%を要求されると医師たちは逃げ出したくなります。これが、今の医師不足の大きな一因であり、タライまわしの一因でもある。
(3) 診療報酬の経済誘導の結果
二次救急病院から断られ、三次病院に運ばれるケースが最近増えている。そして三次病院がパンクしそうになって来ている。この原因には、《 救急患者を沢山みれば “ 報奨金 ” を出します 》 という診療報酬上のシステムが2002年より始まり、その中で救急車で来た患者が多ければ多いほど診療報酬が高くなる仕組みを厚労省が作ったことにある。時間外に来られる場合には救急車で来て下さいと、対外的に患者さんに向かって救急車の利用をすすめた。これ位で救急車が利用できるなら今後も使おう、行き先はこちら ( 患者側 ) の意向で運んでくれるのなら、あっちの大病院の方が安心だと大病院への救急搬送が多くなった。因 ( ちな ) みに、この10年間で救急車による搬送は300万人から500万人に増えたという。そかもそのかなりの部分が軽症者だ。
これは診療報酬で経済誘導 ( 急性期特定入院加算方式 ) し、そして患者さんのブランド志向を刺激したため、二次救急病院を一挙に跳び越して三次救急病院への患者が急増し、今やパンク状態になってきた。埼玉医科大学医療センターの救急患者は、数年前に比べると4倍になったという。しかも、その大部分が軽症者であるため、時間外受診者に対して1回につき 8,400 円を請求したいという案を昨年公表した。今どうなったかどうか、私はまだ調べきれていない。
(4) 政策の失敗をきちんと総括せよ
救急患者の “ タライまわし ” の陰の功労者 ( !!!? )は診療報酬のカラクリが大きかったということは未だ誰も書いていないが、厚労省の罪は大きい。このような混乱の張本人は、医療費抑制のため医療に市場経済原理主義 ( 報奨金制度 ) を導入した小泉政権と厚労省にある。そしてそれを主導して来たのは小泉政権下の経済財政諮問会議であったということを肝に銘じるべきだと私、松本文六は思う。しかし、このような政策の失敗の責任をとったという話は未だかって聞いたことがない。
これだけ、医療現場を混乱に陥 ( おとし ) れた役人はやはり責任をとってもらいたい。新たな政策を出す時にはシュミレーションをして、その光と影の分をきちんと分析し、事前に公表すべきであろう。影の分は知らんよ! というのは何としてでも止めさせるべきである。少なくとも2年前の診療報酬改定に当たった厚労省の責任者は2年後には必ず総括文書を国民に向けて出して欲しい。否、出すべきだと松本文六は考える。
総括→仮説→実行→光と影の総括、という循環をきちんと踏まえてゆけば、馬鹿げた医療に関する法律や省令・通達などは生まれて来ないであろう。
| < 見る・観る・聴く・嗅ぐ (12) | メイン | 見る・観る・聴く・嗅ぐ (13) > |
![]()
![]()




